日本並びに中国産の生うるし(荒味うるし)の主成分は、ウルシオールで(日本産7割弱、中国産6割強)他にゴム質、含窒素物、水分等で構成されている。 この生うるしから、ウルシオールの比率を大幅に高め、不純物を徹底的に取り除くことで、うるしの美しさそのままに、最大の弱点といわれた紫外線にも強い”うるし”が誕生した。 もともと文化財や寺社仏閣補修用に開発されたうるしで、大変手間のかかる特許精製手法により可能となった。 便宜上”吹付”により塗装される溶剤、塗料等を混入した"新うるし"等々呼ばれるものとは、異なり、100%うるしを原料としている。 弊社ではこの特許製法の漆塗りのことを"夢うるし塗”と表記しております。 特許製法の夢うるしの特徴は、 @紫外線にも強く、色落ち、劣化が大幅に改善されたこと A1000回以上の食器洗浄機テスト、煮沸テストによる変色、艶落ちがほとんど認められないこと(もちろん深みのある塗上りは従来どおりである)。 B漆塗には匂いが長く残るものだが、この場合は塗り上がり後2〜3日ほどで、ほとんど気にならない香りとなる。蓋物(吸物椀、丼重)には心強い漆である。 熱にも強く、ごはん等汚れもつきにくく、キズもつきにくく、キズが残っても目立ちにくい。 うるし本来の経年変化(明るく透明感が増す)である、うるし独特の風情は損なわれないこと。 長所ばかり並べ立ててみたが、欠点もある。 @従来のうるしより三倍も早く硬化してしまうので、塗りがたいへんむずかしい。 A色の種類が作りにくく、当初、漆本来の暗い飴色仕上げのものにならざるをえなかった。 →現在では、 強度に遜色ない朱色の漆のものも製作できるようになった。
伝統工芸江戸漆器の塗りの工程は、後述の江戸漆器工程に概要説明(下欄参照)があります。 この夢うるし塗りの工程は、不純物の混入を極力さけることが大前提となる。 したがって、従来の下地、下塗り、中塗り、上塗りといった工程とは異なり、同じ特許製法のうるしを何度も丁寧にうすく塗り重ねていく手法がとられる。 極力漆のみで木地補修も行い、布、紙も使用せずに仕上げる。 木の周りを夢うるしだけで取り囲んだかたちであり、だからこそ、この強度が生まれる。 ”洗浄機使用OK”の表示の椀は、木地には最高のきめの細かいみずめ櫻を使用し、従来のものよりさらに乾燥させた上で、塗り上げている。
最近では、刳りものの椀等の丸物だけでなく、長所を利用して、丼重にも使用されるようになった。丼重の場合、木を接合する工程が生じ、漆のみでの仕上げとはならない。いわゆる本堅地の工程となる。 そこでは、 布貼、のり、錆、といった漆以外のものも使用せざるをえない。その為、洗浄機での使用は可とはしていないが、熱により強く、退色しにくい上に、ごはん等異物がつきにくく、うるし特有の臭いが抜けやすく、汚れも落ちやすいことは大きな利点である。一度に大量のうな重を提供する大店の場合、どうしても一度に焼きあがらないので、順次温蔵しておき、提供することもあるようですが、そんなニーズにも十分答えられる優れものである。